皆さんは日本人の平均寿命をご存じですか?厚生労働省の発表では、2019年の日本人の平均寿命(最新の公式な統計)は男性81.41歳、女性87.45歳でした。
その一方で「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」である健康寿命は男性72.68歳、女性75.38歳であり、平均寿命と比べて男性で約9年、女性で約12年の差があります。
ただ長生きするだけではなく、健康に長生きしたい。と皆さん思いますよね。
全身の健康のためには、お口の健康も大切!自分の歯でしっかり噛んで食事ができる口腔内環境を整えることは、健康寿命を延ばすために不可欠です。
特に、近年歯周病が全身の様々な病気に影響を及ぼすことが知られています。
歯周病は日本人が歯を失う原因の第1位で、45歳以上の日本人の半数以上の方が歯周病と言われるほど、多い病気です。
今回は歯周病とはどのような病気でどのような影響を与えるか。その予防方法についてお伝えします!
歯周病とはどのような病気か
以前のブログでもお話しましたが、歯周病の原因となるのは歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌の塊です。
私たちの口の中にはたくさんの種類の細菌がいます。その中には歯周病を引き起こす、歯周病原細菌と呼ばれる細菌がいます。
歯磨きが不十分な部分には、この細菌が塊となってネバネバとしたプラークを形成します。プラークが時間とともに量が多くなり、よりネバネバして取り除きにくいものになっていきます。
このプラーク中の細菌が歯の周りにある歯周ポケットの中に侵入し、歯ぐきを攻撃することで歯ぐきに炎症が起こり初期の歯周病である歯肉炎が起こります。初期の歯肉炎の状態であれば、しっかり歯磨きでプラークを取り除けば歯ぐきは元の状態に戻ります。
しかしプラークがどんどん増え、歯ぐきが腫れた状態が進行していくと炎症が歯ぐきだけでなく、歯の周りの歯根膜と呼ばれる膜や、歯を支える骨にまで広がってしまいます。
ここまで進行すると、元の状態の歯ぐきに戻ることが難しくなります。
炎症が進むことで歯を支える骨が溶けていき、歯がぐらぐらしたり、最後には歯が抜けてしまうこともある。これが歯周病です。
歯周病が影響を及ぼす全身疾患
近年の研究で、歯周病は様々な全身疾患に悪影響を及ぼすことが知られています。
心疾患
狭心症や心筋梗塞などの心疾患は、心臓の筋肉に血液を送る血管の中が細くなる動脈硬化により引き起こされる病気です。動脈硬化は食生活や運動不足、ストレスなどの生活習慣により引き起こされると考えられていますが、近年は歯周病原細菌も悪影響があることが報告されています。
歯周病の原因となる細菌には、動脈硬化を誘導する物質を出す働きがあることがわかっています。これにより、血管内に脂肪性の沈着物(プラーク)ができ血管内が細くなります。子のプラークが剝がれると、血管が詰まることもあり心疾患を引き起こします。
糖尿病
糖尿病は日本人に非常に罹患者数の多い病気です。糖尿病の方は以前から歯周病になりやすく、悪化しやすいとされてきました。そして近年は、歯周病の人は糖尿病が悪化しやすいこともわかっています。
歯周病原細菌は腫れた歯ぐきから血管内に入り、全身を回ります。この細菌が持っている毒素がTNF-αと呼ばれるインスリンの働きを邪魔する物質の生成を推し進め、血糖値が下がりにくくなるのです。
糖尿病の患者さんに歯周病治療を行うと、糖尿病が改善することもわかっています。
誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎は高齢者で死亡率が高い病気です。
高齢になると飲み込む筋肉の衰えなどにより、食べ物や飲み物が誤って気管に入ってしまいやすくなります。この時に一緒に口腔内の細菌は肺に入り、免疫力の衰えた高齢者では誤嚥性肺炎を発症してしまいます。
誤嚥性肺炎の原因となる細菌の多くは歯周病菌と言われており、予防のためには歯周病のコントロールが大切です。
その他
妊娠中の方が歯周病に罹患していると、早産や低出生体重児のリスクが高まることが知られています。
また、骨粗しょう症の患者さんは歯周病が進行しやすいとされていたり、歯周病源細菌が関節炎や糸球体腎炎を発症させるとの報告もあります。
このように、歯周病は全身の様々な臓器に影響を及ぼすのです。
歯周病予防のために大切なこと
歯周病予防のために大切なことは、細菌の塊であるプラークを取り除くことです。
日々のセルフケア
歯周病予防に最も大切なことは日々のセルフケアです。クリニックでどんなにお口の中をきれいにしても、その後のセルフケアが不十分だとすぐにプラークはたまってしまいます。歯ブラシやフロス、歯間ブラシなどを使ってきれいにプラークを除去するためには、ご自身に合った歯磨き方法をしっかり学ぶことが必要です。
ぜひ歯科医院で歯磨きの仕方を学びましょう。
クリニックでのプロフェッショナルケア
毎日の歯磨きを頑張っていても、自分では取り切れないプラークや歯石があります。定期的に歯科医院でのプロフェッショナルケアで、隅々までお口をきれいにすることで、健康な口腔内環境を保ちやすくなります。
禁煙を!
こちらも以前のブログでもお話しましたように、タバコは歯周病に大敵です!タバコには血管を収縮させる作用があり、歯ぐきの血流を悪くします。
喫煙することで、歯周病が進行しやすく、治療しても治りにくくなります。
歯周病予防には禁煙が一番です!
まとめ
歯周病はとても身近で罹患者数の多い病気です。しかし、全身に様々な悪影響を及ぼすことが知られています。健康に長生きするためには、お口の健康が欠かせません!
歯周病予防に最も大切なことは日々のセルフケアです。歯周病が悪化する前に適切にケアをすることで、健康な口腔内環境を守ることができます。
日々の歯磨きの仕方を学んだり、プロフェッショナルケアを受けたり、ぜひ定期的に歯科医院を受診しまししょう。