最近、歯科医院のホームページなどで、「当院は、か強診の認定医院です」という言葉を目にした方もいると思います。
「か強診」とは「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」を略した言葉です。
今回はこの「か強診」とは何なのか?について説明していきたいと思います。
そもそも、か強診とは何?
かかりつけの歯科医院があることと、新しい虫歯の発生や残せる歯の数に相関があることが近年明らかになってきました。そこで、厚生労働省は生涯を通じて歯科疾患の重症化を予防するために平成28年度の診療報酬改定で「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」(か強診)という制度を設けました。
ここで言う、かかりつけ歯科医の役割には安心・安全な歯科医療の提供に留まらず、地域医療の担い手として医療や介護に関する幅広い知識と見識を備え、患者さんの生涯にわたる口腔機能の維持・向上を目指すことが求められます。
そのうえで、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所には、地域住民のライフステージに応じた継続的な口腔管理により、歯科疾患の重症化予防を図る医院としての役割が求められます。
か強診の基準
ここまでの説明では、患者さんにとって「か強診と」他の歯科医院で何が違うのかまだ理解できないと思いますし、身近に感じることはできないと思います。
それは、全国の「か強診」の認定歯科医院はそう多くはないからです。
なぜなら、「か強診」に認定されるには以下の厳しい施設基準をクリアしなければならないからです。そのため全国の歯科医院の約20%程しかないと言われています。(都道府県によって割合に差があります)
その施設基準はというと、
1)歯科医師が複数名、または歯科医師と歯科衛生士がそれぞれ1名以上配置されていること
2)過去1年間で歯科訪問診療1又は2、歯周病安定期治療及びクラウン・ブリッジ維持管理料を算定していること。
3)偶発症に対する緊急性の対応、医療事故及び感染症対策に関する医療安全の研修、高齢者の特性や口腔機能管理及び緊急時対応にかかる研修を修了した常勤の歯科医師が1名以上配置されていること。
4)診療時の偶発症対応ができるよう、別の医療機関と連携が取れていること。
5)迅速に訪問歯科診療が可能な歯科医師をあらかじめ指定するとともに、担当医、診療可能日、緊急時の注意事項に関して事前に患者またはその家族に説明の上、文書により提供していること。
6)当該地域において在宅医療を担う保険医療機関と連携をとり、必要に応じて情報提供できる体制を確保すること。
7)当該地域において他の保健医療および福祉サービスの連携を調整している者と連携していること。
8)口腔内で使用する医療機器に関して十分な感染症対策をとっていること。
9)感染症がある患者の診療体制が常に整っていること。
10)ユニットごとに口腔外バキュームを設置していること。
11)患者にとって安心安全な環境を提供するために、AED、パルスオキシメーター、酸素供給装置、血圧計、救急蘇生セット、口腔外バキュームを設置していること。
以上の様に非常に多岐にわたる条件が必要になります。
しかし「か強診」により保険の適応範囲が拡大されたことで、虫歯の予防や歯周病の細やかな管理、在宅における訪問診療などが保険診療で可能になりました。
ではどんなことができるのでしょうか?
か強診でできること
保険でメインテナンスができる
従来では、歯のメインテナンスを保険でおこなうには3ヶ月以上の期間を開けなければならず、毎月メインテナンスをするとしたら自由診療でしなければなりませんでした。しかし、「か強診」の認定歯科医院では、歯周病の管理と予防の目的で毎月保険診療でメインテナンスすることが可能になりました。毎月メインテナンスすることで歯の健康を維持することにも役立ちますし、患者さんの経済的な負担も軽減されます。
フッ素塗布
今までは、フッ素塗布を保険適応で行うには3ヶ月以上の期間を開けなければなりませんでした。しかし、「か強診」の認定歯科医院では1ヶ月に一回フッ素塗布を行うことが可能になりました。子供の歯を守るため、また虫歯になりやすい体質の方にとっては月に一回のフッ素塗布は虫歯の予防の観点からも大きなメリットとなるでしょう。
安全な環境で治療が受けられる
上でも説明したように、「か強診」の認定を受けるには、厳しい施設基準をクリアしなければなりません。適切な研修を受けたり、他の医療機関とも連携をとっているため、安全な環境での治療を受けることができます。
しかし、注意しなければならない点もあります。
か強診で注意する点
患者さんの自己負担額が高くなる
他のクリニックと比べて、「か強診」の認定を受けている歯科医院は保険診療で行なえる項目が増えるため、患者さんの自己負担額も高くなってしまいます。認定を受けている歯科医院と受けていない歯科医院で自己負担額に差が出てしまうことがあります。しかし今まで説明してきたようなメリットも多いため、ご自身でよく検討して受診することをお勧めします。
まとめ
いかがでしたか。「か強診」の認定を受けた歯科医院はさまざまな厳しい施設基準をクリアしているため、とても良い治療環境が整っています。患者さんの自己負担額は増えてしまいますが、一生のかかりつけ医となって毎月口腔内を管理するという、それを上回る「安心感」を得られることができるでしょう。
「か強診」の認定を受けている歯科医院は、都道府県によって差はありますが、まだ全国で約20%程度しかありません。
虫歯にならないように、歯を失わないようにするための継続的な検査や治療をすることができる予防重視の歯科医療を提供し、皆さんの健康寿命が伸びることを目的としており、今後も「か強診」の認定を受けた歯科医院が増えることが望まれています。
もちろん当院も「か強診」の認定歯科医院ですので、わからないことや疑問に思うことはご相談ください。