インプラント治療は治療期間が、一般的な歯科治療と比べると長くなりがちです。
少しでも治療期間は短い方がいいと思うのが、正直な気持ちだと思います。
しかしながら、歯周病のある方はインプラント治療より先に、歯周病治療を受けておくことを当院ではおすすめしています。
今回は、インプラント治療で歯周病の治療が必要な理由についてお話します。
インプラント治療と歯周病の関係性や、なぜ歯周病を治療しておかなければならないのか、などがお分かりいただけると思います。
歯周病の実情
インプラントと歯周病は意外と身近なものです。
厚生労働省の調査によると、日本人の成人の80%以上の方が歯周病にかかっているそうです。
こうしたこともあり、大人の方で見てみると、抜歯に至る原因のトップが歯周病になっています。
なお、子供の場合は、虫歯がトップです。
インプラント希望の方の歯周病の状況
インプラントは、歯を失ったところ、すなわち抜歯したところに埋め込まれる人工歯根です。
抜歯に至る原因のトップが歯周病ということから、インプラント希望の方の多くに歯周病が見られます。
歯周病は、骨吸収の状態や進行の進み方によってステージとグレードに分類されています。
ステージはⅠ~Ⅳ、グレードはA~Cに分けられ、それぞれの基準に沿って病状を決めていきます。
例えば、軽症なのがステージⅠグレードA、重症なのがステージⅣグレードCといった具合になります。
このうち、抜歯することになるのは病状が進み保存不可能な歯なので、インプラント希望の方の多くが重度の歯周病にかかっている可能性があります。
インプラントと歯周病の関係
続いて、インプラントと歯周病の関係について説明します。
まずインプラントの手術に影響すると思われることは...
インプラントが安定しにくくなる
インプラントは、顎の骨とインプラントが結合することで安定する仕組みになっています。
インプラントが十分安定するには、骨の厚みや幅が十分確保されていなければなりません。
骨量不足によるインプラントの不安定化
インプラントは、顎の骨とインプラントが結合することで安定する仕組みになっています。
インプラントが十分安定するには、骨の厚みや幅が十分確保されていなければなりません。
歯周病が重症化すると、歯の周りの歯槽骨という骨が吸収されます。
歯槽骨は歯を支えるとても大切な骨なのですが、吸収されると支える力が下がるため、やがて歯がグラグラして、抜けてしまいます。
重度の歯周病の方は、すでにかなり骨が減っています。
歯周病により骨が減っていると、インプラントが十分、骨と結合できません。
結合力が足りないため、インプラントを入れたとしても、安定性に欠けてしまい、しっかり噛めないインプラントになってしまう可能性があります。
インプラント周囲炎のリスクが高まる
インプラント周囲炎は、歯周病のインプラント版とも言える病気です。
インプラントが抜けてしまう原因のトップに挙げられるほどのインプラントの大敵です。
インプラント治療後に起こると思われることは...
歯周病菌が多いことによる影響
歯周病は、数百種類もいると言われている歯周病菌が原因で起こる病気です。
歯周病を引き起こしやすい歯周病菌もいれば、そうでない歯周病菌もいるのですが、どの歯周病菌もある程度の数がいないと歯周病を引き起こすことはありません。
重度の歯周病の方は、それだけ歯周病菌の数が多いと言えます。
インプラント周囲炎もお口の中の細菌が原因で起こります。
先ほど、インプラント周囲炎は歯周病のインプラント版と書きましたが、インプラント周囲炎の原因菌は、必ずしも歯周病と一致しているわけではありません。
しかし、重症の歯周病では歯周病菌が多くなります。
歯周病菌とインプラント周囲炎の原因菌は種類が似ているので、歯周病菌が増えるにつれて、インプラント周囲炎の原因菌も増えます。
このため、歯周病を放置していると、インプラント周囲炎のリスクが高まり、せっかく入れたインプラントが抜けてしまう原因になります。
インプラント治療で歯周病の治療が必要な理由
インプラント治療で歯周病の治療が必要な理由は、次の通りです。
インプラントの成功率を高めるため
歯周病治療を受けておくと、インプラントの成功率が高まります。
骨量減少の抑制
歯周病治療を受けても、歯周病で一旦減った骨を元に戻すことは、たいへん困難です。
ですが、それ以上減るのを防ぐことはできます。
少しでも骨が多く残っている方がインプラントには有利なので、骨が減るのを防げるのはインプラントにとっても大きなメリットと言えます。
細菌感染の予防
インプラントを顎の骨に埋めるとき、インプラントにお口の中の細菌が感染すると、インプラントと骨が結合できなくなることがあります。
また、骨が不足する場合に人工骨などを使う骨造成術をすることがありますが、この場合も細菌感染すると骨造成が困難になります。
歯周病治療によりお口の中の細菌をあらかじめ減らしておくと、こうしたインプラントや移植骨に細菌感染するリスクを減らすことができるので、インプラントの成功率も上がります。
インプラントの寿命を長くするために
歯周病治療はインプラントの寿命にも関係しています。
インプラント周囲炎の予防
歯周病治療によりお口の中の細菌を減らしておくと、インプラント周囲炎の原因菌も減ります。
インプラント周囲炎の原因菌も、ある程度の数がなければインプラント周囲炎を発症させることはありません。
歯周病治療を受けておくと、インプラント周囲炎を防ぎ、インプラントの寿命を長くする効果が期待できます。
インプラントへの負担の増加を防ぐ
歯周病になると、歯がグラグラして動き始めます。
動き始めた歯はしっかり噛めないので、残りの歯で噛まなければならないので、その分他の歯の負担が増えます。
これはインプラントも同じです。
インプラントを入れた当初は、他の歯と同じように噛めるように作っていても、他の歯が動き出して噛めなくなるとインプラントにかかる負担が増えます。
すると、インプラントが壊れる、動き始めるなどのリスクが高まり、インプラントの寿命にも悪影響を及ぼします。
歯周病治療を受けておくと、他の歯を守ると同時に、インプラントも守れるというわけです。
まとめ
今回は、インプラントと歯周病の関係性とインプラントに歯周病の治療が必要な理由についてお話ししました。
歯周病治療をあらかじめ十分に行なっておかないと、インプラントの成功率も下がってしまいます。また寿命も短くなってしまいます。
面倒に思われるかもしれませんが、歯周病治療はそれほど大切です。
当院はインプラント治療だけでなく、歯周病治療にも積極的に取り組んでいますので、お尋ねになりたいことや相談したいことがある方はご来院ください。