入れ歯に関する誤解
加齢に伴い歯ぐきが下がり歯周病になると歯が揺れて、抜歯を余儀なくされるということは少なくありません。
抜けた本数が少なければ被せ物をつなげて補う治療であるブリッジなども適応になります。
しかし、残っている歯の本数が少ない場合や、歯があっても状態が悪くブリッジの支えとして機能するのが難しい場合には入れ歯を選択することもあります。
入れ歯は加齢とともに必須の治療でしょうか?
高齢になると入れ歯は必須か
入れ歯は加齢とともに必ず入れることになるかというとそうでもありません。
令和4年の歯科疾患実態調査の結果から、51.6%の方は8020つまり80歳でも20本以上の歯を持っていることがわかりました。
徐々にお口の中に関心を持つ方が多くなっていることや歯科治療を受ける事が多くなった結果かもしれません。
歯を失う最も多い原因として歯周病が挙げられますが、きちんと治療・管理を行えば、高齢になっても入れ歯を回避することが可能になります。
入れ歯の良い点
入れ歯は可能な限り避けたいと思っているかもしれません。
しかし、残っている歯や歯ぐき・骨の状態などから避けられない場合もあります。
入れ歯は一本だけ失ってしまった場合から全て歯がなくなってしまった場合までカバーができる治療です。
これにより歯を失った後に生じる顔貌の変化や咬み合わせの変化を改善することが可能となります。
入れ歯の悪い点
一方で入れ歯は補う本数や場所などにより入れ歯自体の形態が大きくなります。
入れ歯は大きくなれば、違和感が非常に出てきます。中には入れると気持ち悪さを感じる方もいます。
違和感程度であれば慣れる可能性もありますが、気持ち悪さはなかなか改善が難しいです。
また、自分自身の歯と比べて咬みにくい、力が入れにくいという訴えもよく聞きます。
調整により改善可能な場合もありますが、難しい時もあります。
自分の歯で咬むということ
入れ歯は加齢だからという理由で必ずしも必要ではないということを確認した上で、自分の歯を長持ちさせるためにはどのようにすべきかを確認しましょう。
歯を失う理由は歯周病と虫歯、そして意外にも破折が挙げられます。
これらの対策にはどのようなものがあるでしょうか。
自分の歯を長持ちさせるには
歯周病と虫歯に対して、個人レベルで行う対策は歯磨きが一般的です。
当たり前のことですが、意外ときちんとできていない方が多いのが実情です。
歯を磨く方はもちろん多いのですが、的確に汚れを落とせていないのです。
歯ブラシの当て方や動かし方、力加減などきちんと再確認する必要があります。
ここで大切になるのは定期的な歯科受診です。
歯科医院で行う治療と予防
歯科受診では歯や歯茎の状態を目視や器具を使い確認します。
レントゲン写真を撮り確認することもあるでしょう。この時に汚れの付着具合も確認しています。
一般的には虫歯も歯周病も初期には無症状です。この時に治療を行えば大きな治療にならず長引くことも少ないでしょう。
歯石取りや汚れ取りは歯周病治療の一環です。
ただ単に汚れを取り除いている訳ではありません。
歯磨き指導も重要な歯周病治療の一環です。
歯磨きが十分にできていないと歯周病治療を行なっても効果が得られにくいことが知られています。
歯の破折を予防するには
歯の破折は意外にも少なくありません。
以前に大きく歯を削ったことのある部位や歯ぎしりや食いしばりなど異常に力をかけてしまう方の場合に起こり得ます。
歯の一部が欠ける程度から竹を割ったように真っ二つに割れてしまうこともあります。
前者であれば欠けた部位を詰めたり、磨いたりすれば良いかもしれませんが、後者であれば基本的に抜歯になってしまいます。
歯を破折させないようにするには、大きく歯を削るような治療をしないことが大切です。
つまり、虫歯を大きくしないことです。
また、食いしばりなど過剰な力をかけてしまう場合にはマウスピースなどを使用することも検討します。
過剰な力を分散させ破れるリスクを下げる目的があります。
歯を失ったままにするリスク
入れ歯を避けるために、抜歯後に何もしないという選択があるかもしれません。
歯を失ったままでいると、どのような弊害があるでしょうか。
単に歯の問題に留まらない可能性も最近では示唆されています。
その他の歯が移動する
歯を失ってしまうとその部位ではもちろん咬めません。
失った部位の隣に歯があれば失った方に傾きやすく、向かい合わせの歯も挺出と言って延びてきてしまう事があります。
これらは必ず起きる訳ではありませんが、可能性として挙げられます。
歯を失ったままにする全身的な弊害
最近では歯を失うことによる認知症リスクの向上が言われています。
歯を失う前に咬んでいた部位は歯を失うことにより刺激が少なくなり、その刺激は脳にも伝わりにくくなります。
これにより脳の萎縮が起こる可能性が挙げられています。
また、虫歯や歯周病がある方は、お口の細菌が体を巡り認知症と関連がある物質が作られてしまうことも論文では示唆しています。
歯周病と糖尿病の関係や早産やリウマチなどとも関連があることも言われています。
まとめ
高齢になると入れ歯が必要になるのか、というお話をしてきました。
高齢だからという理由で入れ歯になるということではなく、その他の理由から入れ歯を選択する可能性が出てきてしまいます。
それを回避するには個人レベルでは歯磨きの徹底、そして定期検診を受ける事が大切です。
入れ歯以外にもブリッジやインプラントなどいくつかの方法により入れ歯を回避する事が可能な事があります。
また、歯を抜けたままにすることは全身にも影響を及ぼす事があります。
入れ歯が不可避なケースもあるので、気になる方はまずは相談だけでもするようにしましょう。