フッ素がむし歯予防に大切ということを聞いたことはありますか?
歯みがき粉にフッ素が含まれていたり、お子さんの歯にフッ素塗布を行ったり。フッ素を日常的に使っているという方も多いです。
一般的にフッ素と呼ばれることが多いですが、実は歯科で使うフッ素は他の元素とくっついた「フッ化物」です。
今回はフッ化物とはどのようなものなのか。フッ化物がなぜ歯にいいのかについてご紹介します!
フッ化物って何?
フッ素とは
フッ素とは自然界に存在する元素で、私たちが普段食べている食べ物にも含まれています。
フッ素は危険と聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。確かに、フッ素そのものは劇薬です。しかし、フッ素は反応性が高く通常他の元素とくっついて化合物の状態(フッ化物)の状態で存在します。歯みがき粉などに含まれるのは正確にはフッ素ではなく、フッ化ナトリウムと呼ばれる化合物です。
フッ化物がむし歯予防に使われるようになった理由
1900年代初頭にアメリカのある一部の地域で、歯に変色がある人が多くみられました。その人たちを調査したところ、むし歯がないことが発見されました。
1930年代、歯の変色が地下水由来のフッ化物が多い飲料水が使われている地域と関連することが研究で明らかにされました。
このことから1940年代アメリカを中心に、人工的にフッ化物を水道水に添加する試みが始まりました。このこと、アメリカやヨーロッパなど多数の地域でむし歯予防のため水道水にフッ化物が添加されていました。
その後1980年代に、フッ化物を全身に取り込まなくても口腔内への局所的な摂取でむし歯予防効果があることが示されたため、歯みがき粉でのフッ化物の使用が大きく広まりました。
フッ化物のむし歯予防効果
フッ化物がむし歯予防に大切!と言われても、どのような効果があるのか気になりますよね。フッ化物には歯を守るためのたくさんの効果があります。
歯を強くする
歯の表面の固いエナメル質は、ハイドロキシアパタイトという結晶構造でできています。
フッ化物がお口の中に入ると、ハイドロキシアパタイトと結合してフルオロアパタイトという物質に変化します。フルオロアパタイトは安定した結晶構造で、酸で溶けにくい強い歯になります。
歯の再石灰化を促進する
歯の表面は細菌が糖を原料として作り出す酸によって溶かされ、溶けだしたカルシウムが唾液の作用で再度エナメル質に取り込まれる再石灰化を繰り返しています。
歯が溶けるスピードに再石灰化のスピードが追い付かなくなるとむし歯になります。
フッ化物はこの再石灰化を促進するため、むし歯ができにくくなります。
むし歯菌が酸を出しにくくする
むし歯はお口の中の細菌が糖を原料にして酸を出すことで歯が溶かされできます。フッ化物はこの細菌の活動を抑制し、酸を出しにくくする作用があるのです。
フッ化物の効果的な使い方
ホームケア
フッ化物は毎日継続して取り続けることが大切です。
毎日のセルフケアで使いやすいのはフッ化物入りの歯みがき粉の使用ですね。
市販の歯みがき粉の大部分にはフッ化物が含まれていますが、フッ素不使用のものもあります。また、フッ化物の含有濃度も商品によって異なります。
フッ化物入り歯みがき粉の推奨フッ化物濃度は年齢によって異なります。6歳~14歳は成人と同様に1400~1500ppmの高濃度のものが推奨されています。使用量は成人と同量で歯ブラシに2㎝くらいたっぷり歯みがき粉を付けて磨きましょう。歯磨きをした後はお水でぶくぶくゆすぎすぎると、フッ化物が流れて効果が弱くなってしまいます。うがいは少量の水で軽く行いましょう。
3歳~5歳のお子さんはフッ化物濃度が900~1000ppm以下の歯みがき粉を使いましょう。使用量は歯ブラシに5mm(グリーンピース程度)です。歯が生えてから2歳までは、同じく900~1000ppm濃度の物を歯ブラシに1~2mm程度(米粒程度)の使用をお勧めします。うがいがまだ上手でないお子さんは、うがいの必要のないジェルタイプやフォームタイプがおすすめです。お子さんの場合、年齢ごとの使用目安量があります。使用量が多くなりすぎないように注意しましょう。
フッ化物歯みがき粉の他には、フッ化物の入った液でうがいをするフッ化物洗口などがあります。
歯科医院でのフッ化物塗布
毎日のホームケアに加えて、お子さんやむし歯のリスクの高い方は歯科医院での定期的なフッ化物塗布がおすすめです。歯科医院で用いるのはより高濃度のフッ化物です。
お家でのセルフケアに加えて用いることで、より効果的なむし歯予防効果が期待できます。
まとめ
昔に比べて、むし歯のある子どもは減ってきています。ですが大人になったときに、今までむし歯は1本もありません!という方は本当にまれです。
むし歯予防には日頃の食習慣や、歯みがきに加えてフッ化物の効果的な使用がとても大切です。
しかし、フッ化物は薬剤です。特にお子さんは取りすぎると永久歯が変色したりする恐れがあります。
ぜひフッ化物の効果的で正しい使い方を歯科医院でご相談ください!