歯を失うと当然ながら噛む力が下がります。
歯を失ったときの治療法は、インプラントの他、入れ歯やブリッジがあります。
入れ歯やブリッジで治しても、実は下がった噛む力は、それほど改善できません。(もちろん個人差はあります)
ところが、インプラント治療を受けると、下がった噛む力がかなりアップして、しっかり噛めるようになります。
今回は、インプラント治療による噛む力の変化についてお話します。
普通の歯の噛む力について
歯が28本全て揃っていると、どれくらいの噛む力があるかご存知でしょうか。
答えは、50〜90キログラムくらいです。
ご自身の体重に相当するくらいの噛む力があると言われています。
多くの方が、当然ながら元と同じように噛める治療をご希望になりますが、普通の歯の持っている噛む力はかなり高く、同じくらいに改善させるのはたいへん困難です。
では、それぞれの治療法での噛む力についてお話ししていきます。
入れ歯の噛む力について
入れ歯は、取り外し可能なように作られた人工歯です。
まず入れ歯の噛む力について解説します。
入れ歯の噛む力
入れ歯の噛む力は、ブリッジやインプラントと比べるとたいへん弱いです。
総入れ歯
総入れ歯は、歯を全て無くしてしまった方用の入れ歯です。
総入れ歯は、どれだけ上手な歯科医師が作っても、普通の歯と比べて10~20%程の噛む力と言われています。(もちろん個人差があると思いますが)
部分入れ歯
部分入れ歯は、歯が1本でも残っている方向けの入れ歯です。
部分入れ歯の噛む力は、普通の歯の30〜40%程度と言われています。
部分入れ歯は歯が残っているので総入れ歯と比べるとまだ噛めますが、それでも普通の歯の半分にも満たない噛む力しか発揮できません。
入れ歯が噛めない理由
ではどうして、入れ歯は噛む力が弱いのでしょうか。
入れ歯の支え方
噛めない理由のひとつは、入れ歯を支える方法です。
入れ歯は、歯肉が支えるように作られています。
歯が残っている部分入れ歯は、クラスプという支えを歯にかけていますが、歯肉が支えていることには変わりありません。
歯肉は歯と違って軟らかい組織、軟組織と呼びます。
しっかり噛めるようにすると、歯肉は変形し、入れ歯が歯肉に食い込みます。
すると、痛くて噛めません。
少し噛み合わせを緩く作らざるを得ず、強く噛めなくなります。
取り外し可能な構造
入れ歯は、入れたり外したりできるように作られていますので、きちんと合っているように見えても、少し遊びがあります。
噛むたびに、入れ歯が少し動くため、噛み合わせた力が逃げてしまいます。
これも入れ歯があまり嚙めないと言われる理由の一つです。
ブリッジの噛む力
ブリッジは、失った歯の代わりになる人工歯とその両側に残っている歯の被せ物とをくっつけた構造をしています。
入れ歯と違って、セメントで固定しているので外すことはできません。
続いて、ブリッジの噛み合わせ力について解説します。
ブリッジの噛む力
ブリッジの噛む力は、普通の歯の60〜80%以上です。
入れ歯よりはよく噛めますが、普通の歯と同じではありません。
ブリッジが普通の歯ほど強く噛めない理由
では、なぜ歯に接着していて動かないブリッジでも、普通の歯ほどに噛めないのか、という理由を説明します。
支えの歯の状態に依存する
ブリッジは、人工歯の両側の歯を支えにしています。
支えの歯がしっかりしていればいいのですが、多くの場合、歯周病などのトラブルを抱えています。
歯周病になると歯を支えている骨がダメージを受けるため、歯の噛む力も下がります。
もし、支えの歯が歯周病になっていれば、支える力の低下と共に噛む力も下がってしまうというわけです。
ブリッジの構造
噛み合わせたブリッジの支えの歯には、人工歯に加わる力もかかります。
もし、人工歯1本、支えの歯2本の3本分のブリッジなら、支えの歯には単純に考えて1.5本分の力がかかります。
人工歯2本、支えの歯2本なら、1本の歯に2本分の力がかかります。
噛み合わせの力が強すぎると、それが歯を支える骨にダメージを与えてしまうことになりかねません。
それを咬合性外傷といいます。
咬合性外傷を起こさないよう、噛み合わせの力を適度に調整することもあります。
インプラントの噛む力
インプラントは、人工の歯の根を骨に埋め込み、そこに上部構造という被せ物を装着する治療方法です。
続いて、インプラントの噛む力をみてみましょう。
インプラントの噛む力
インプラントの噛む力は、普通の歯の85〜98%くらいです。
普通の歯とほとんど同じくらい噛む力を回復できます。
インプラントが噛める理由
ではインプラントの噛む力が強い理由を説明していきます。
骨と結合している
インプラントの素材はチタンです。
チタンには骨と結合する性質があり、チタンで作られたインプラントは骨とがっちり結合します。
このため、普通の歯と同じくらいの噛み合わせ力に耐えられるので、噛む力も高く設定できます。
支えの歯を必要としない
インプラントは、ブリッジのような支えの歯を必要としません。
支えの歯が弱いので噛む力も下がるということがなく、インプラントそのもので噛む力を受け止めるので、噛む力を高く保てます。
各種治療法と噛む力の変化
歯を失うと、体重分くらい噛めていた噛み合わせの力は、当然ですが下がります。
失った歯の噛み合わせを回復させる治療法には、入れ歯、ブリッジ、インプラントがあります。
入れ歯では噛む力の回復はあまり期待できません。
下がったままです。
ブリッジなら噛む力の回復が望めそうですが、支えの歯の状態次第ですので、しっかり噛めるようになるとは言いづらいところがあります。
それらに比べインプラントは、普通の歯と同じくらい噛めるようになります。
低下した噛む力を回復させるには、インプラントが優れていると言えます。
まとめ
今回は、インプラント治療を受けるとしっかり噛めるようになる理由を中心にお話ししました。
普通の歯の噛む力は、ご自身の体重分くらいありますが、入れ歯にすると、噛む力は総入れ歯で10%くらい、部分入れ歯で30〜40%くらいに下がります。
ブリッジの噛む力は6割以上ありますが、支えの歯の状態に左右され、支えの歯が弱いとそれだけ噛む力も下がってしまいます。
一方、インプラントは、骨と結合したインプラント自身が支えるため、普通の歯とほとんど同じくらいの噛む力を持っています。
このため、インプラント治療を受けると、歯を失って下がった噛み合わせ力が大幅にアップします。
したがって、噛み合わせ力を重視した治療をご希望であれば、インプラントがおすすめと言えます。
インプラントをご検討中の方は、ぜひご相談してみてください。