か強診とは、「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所」のことで、平成28年の診療報酬改正で新設された、比較的新しい制度です。
以前のブログでもお話しましたが、定期的に患者の口腔管理をすることで歯周病や虫歯を防ぎ、歯を失うリスクを軽減することを目的としています。
外来診療や訪問診療の体制強化、環境の整備など一定基準を満たした診療所が申請し認定されています。。
2024年6月より、これまでの「かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)」に変わって「口腔管理体制強化加算(口強管)」が新設されました。
こちらも厚生労働省に申請し認定されます。 同じく虫歯や歯周病の重症化を予防することを目的とされていますが、加えて口腔機能の管理なども新たな目的に加わりました。
口強管とは?
口管強(こうかんきょう)は、これまでのか強診と同じく虫歯や歯周病を予防することを目的とした制度です。か強診に加えて、新たな施設基準が加わりました。
一つ目は、「過去1年間に歯科疾患管理(口腔機能発達不全症又は口腔機能低下症の管理を行う場合に限る)、歯科衛生実地指導口腔機能指導、小児口腔機能管理、口腔機能管理又は歯科口腔リハビリテーション3を合わせて算定していること」です。
2つ目は、「小児の心身の特性に関する研修を受けること」です。
新たに加わった、これらはどのような事なのでしょうか?
口腔機能管理
50歳以上の「口腔機能低下症」に対する管理です。ただ口腔機能低下症と診断されただけでは算定することができず、いくつかの検査項目に当てはまることが必要です。
まず、口腔機能低下症であることが前提となります。次に、50歳以上もしくは50歳未満で脳卒中やパーキンソン病の罹患をされている方です。
また、口腔機能精密検査7項目のうち、咬合力低下・咀嚼機能低下・低舌圧のいずれか1つ以上が該当していなければなりません。
口腔機能精密検査には以下のような項目があります。
・口腔衛生状態不良
舌苔付着度(TCI)により評価します
・口腔乾燥
口腔乾燥は、口腔水分計(ムーカス)による評価において口腔粘膜湿潤度が27未満の場合に診断されます。
また、サクソンテストによる評価において2gのガーゼを舌下部に置き、ガーゼの2分間の重量増加が2g以下の場合も診断されます。
・咬合力低下
咬合圧検査器による評価において、デンタルプレスケールというフィルムシートを噛んで測定数値化します。また、残存歯数が19本以下の場合も当てはまります。
・舌口唇運動機能低下
パ、タ、カを10秒間できるだけ早く発音させ、いずれの1秒あたりの発音回数が6回未満の場合に診断されます。
・咀嚼機能低下
咀嚼能率スコア法といって、グミゼリー(咀嚼能率検査用グ ミゼリー,UHA 味覚糖TM)を30回噛んでもらった後、吐き出させ、噛んだものを資料と照らし合わせて評価する方法です。
スコアが0、1、2に相当すると咀嚼機能低下です。咀嚼能力検査といってグルコセンサーを使う方法もあります。
・低舌圧
低舌圧は舌圧測定により評価します。舌圧測定器 (JMS舌圧測定器TM)のプローブを舌で硬口蓋に数秒間全力を用いて押し付け、最大舌圧を計測します。 最大舌圧が30kPa未満で低舌圧と評価します
・嚥下機能低下
EAT-10という、摂食嚥下障害のスクリーニングテストを使います。
方法は、嚥下スクリーニング質問用紙に答えていただきます。10項目の質問で構成され、それぞれ5段階で回答し、合計点が3点以上であれば診断されます。
上の7つのうち3つが該当すると口腔機能低下症と診断されます。
小児口腔機能管理
「18歳未満」の「口腔機能発達不全症」に対する管理です。
口腔機能発達不全症とは、
食べる機能(咀嚼機能・嚥下機能・食行動の評価)、話す機能(構音機能の評価)、その他の機能(栄養と呼吸状態の評価)において発達が未熟だと診断された方です。
なぜ歯科医院で小児の口腔機能の管理に取り組むかというと、小児期の口腔機能は常に発達、獲得の過程にあり、機能の発達が遅れたり、誤った獲得があればその修正や回復を早い段階で行う必要があるからです。
正しい成長に導くために評価し対処することが重要なのです。
詳細は、以前のブログを参照してください。
口管強でできること
口管強でできることは、今までのか強診とほとんど変わりません。これまで3ヶ月周期でしか対応できなかった歯周病、虫歯のメインテナンスが1ヶ月毎に受診が可能になります。
口腔リハビリテーションについて、身体的な理由で外来で治療ができない患者さんの在宅対応もできるようになります。
適切な講習や研修等を受講し、様々な設備がきちんと整備されており、他の医療機関ともきちんと連携が取れているので、安心していただけます。
施設基準が厳しい分、しっかりとした環境で治療を受けることができます。
注意する点
注意する点に関しても今までのか強診とほとんど変わりません。検査をして診断をしなければならないので、一回の受診の患者さん側の自己負担額が増加することもあります。
また、施設基準が厳しいので認可されている歯科医院が少ないです。
まとめ
いかがでしたか?か強診から口強管に名前が変わったことで、大きな変化はありませんが、より子供と高齢者のお口周りの機能についてのサポートが手厚くなりました。
ぜひ、かかりつけの歯科医院を選ぶ際は参考にしてみてください。