ブラキシズムという言葉を聞いた事がある方は少ないかもしれません。
歯ぎしりや食いしばりなどが該当します。
日頃から力仕事をする方、スポーツをする方は食いしばる頻度が多いかもしれませんが、中にはそのように力を入れないような何気ない時に歯と歯が噛み合って力を入れてしまう癖を持つ方がいます。
このような方はブラキサーと呼ばれます。
今回はブラキサーの方は何が問題になってくるのかをお話していきます。
ブラキシズムによる様々な悪影響
ブラキシズムは歯と歯が強くぶつかり合います。歯がすり減ることはもちろん、歯に被せ物や詰め物が入っている場合にはそれが外れやすくなります。
歯を支えている骨や繊維にも過剰な力がかかります。
顎の筋肉は過剰に肥大し、顎の関節にも影響します。
このように歯だけでなく、歯を支える歯周組織、顎関節という口と顎に対して過剰な力をかけてしまうことによる影響が出てしまいます。
ブラキシズムの原因?
ではブラキシズムの原因は何でしょうか?
いくつか関係する因子は挙げられていますが、特定のものが原因と決まっていません。
例えば、ストレス、飲酒、喫煙、全身疾患、薬物などが挙げられています。
起床時と睡眠時のどちらにもブラキシズムは存在します。
どちらもこの様な因子が絡んでいると思われますが、多因子疾患であり原因は特定しづらいです。
ブラキシズムの治療方法
ブラキシズムの治療方法はいくつかあります。
一般的に行われるものはスプリント療法と筋マッサージと呼ばれるものです。
スプリントには種類があり、患者さんの今までの使用歴や現病歴、既往歴などから使用する材料などを変える事があります。
また、スプリントは作成して終わりではなく、調整し確認することも大切です。
どのようなかみ合わせを付与するのかも確認して装着してもらう様にします。
ブラキシズムの治療 スプリント療法
スプリントというのはマウスピースの様なものです。
材料にはプラスチックの様にやや硬い材料からシリコンの様な柔らかいゴム質の材料があります。
これらは使い分けをしています。
例えば、ブラキシズムが強い方は柔らかい材料だとすぐに擦り切れてしまう事があるため、やや硬い材料を選択する場合があります。
以前に硬い材料で使用時に違和感が強く装着できなかった場合には柔らかい材料を使用する事もあるでしょう。
顎関節の状況などから顎の関節の位置を任意に誘導するようにマウスピースを調整する場合には硬い材料を使用し、後にかみ合わせを挙上させることもあります。
この様に今までの使用歴や症状などから材料を選択します。
いずれの材料にしても歯型をとり、それを元に作成するために装着までには少なくとも2回は来院する必要があります。
また、後述していますが装着後の確認も重要です。
使用方法としては夜間に一般的に使用してもらうことが多いですが、症状の強い方や歯を接触させてしまう頻度が多い方は日中にも使用してもらう事もあります。
スプリント装着後の調整とフォローアップ
スプリントは装着後ずっとそのままで良いという訳ではありません。
装着後は使用感や咬み合わせの調整などを行う事が多いです。
したがって定期的な通院が重要です。装着後の症状の改善状態、咬み合わせや装置の破損状態などを確認します。
スプリントの種類や症状によっては装置の改造などを行うこともあります。
このような定期的なチェックや調整を怠ると本来の効果が得られずに症状が悪化する場合もありますので、定期的な調整と確認が重要です。
ブラキシズムの治療 スプリント使用中の疑問
スプリントは使用中に違和感が強く眠れない、痛いなどの症状が出る事があります。
材料を変更するか使用を継続すべきか担当医と、よく相談する様にしましょう。
また使用を長期間していると、強く噛む場所に穴が開く事があります。
この場合には、そのままの使用が可能かどうかも担当医に相談してください。
スプリントの装着期間に歯の治療を行うことになった場合には、使用中のスプリントが使用できなくなる事があります。そのため先に虫歯の治療が優先されることもあります。
ブラキシズムの治療 筋マッサージ
ブラキシズムの治療の一つとして、筋マッサージが挙げられます。
よく部位として挙げられるのは咬筋と側頭筋です。
咬筋は頬にある筋肉で指を頬に押し当てて、奥歯を少し噛み締めると動くのがわかると思います。
側頭筋はこめかみの筋肉です。こめかみ周囲に指を当てて口を開け閉めすると動くのがわかると思います。
どちらも咀嚼筋と言って噛む時に動く筋肉です。緊張が強いとこわばってきます。
ストレスはブラキシズムの要因として考えられていることもあり、マッサージによる緊張の緩和は症状の改善につながる可能性があります。
自分がブラキサーか疑うには
ブラキシズムには日中のものと就寝中のものがあります。
したがって、夜間にブラキシズムをしている場合には本人が気が付きにくい、知らない場合があります。
自分がブラキシズムをしているかどうか確認するにはどの様な点に注目すべきでしょうか。
ブラキサーを疑う点
ブラキサーにはいくつかの特徴があります。例えば
・異常な歯のすり減り
・上下の顎の骨の異常な隆起
・頬の粘膜の特徴的な圧痕
・起床時の顎や肩、頭の痛みなど
が挙げられます。
日中に歯と歯を接触している癖がある場合には、夜間にもその様にしている可能性があるので注意が必要です。
TCHとは
日中にも歯と歯を咬み合わせてしまう癖がある方がいますが、それをTCH( Tooth Contacting Habit)といいます。
習慣的に歯と歯を合わせてしまう癖です。
通常は口を閉じて唇を閉じただけでは歯と歯は接触しません。2~3mmの空間が前歯同士には存在します。
この位置が顎の安静が保たれている位置です。
もし、常に歯と歯を合わせている様ですと、ブラキサーの可能性が出てきます。
自分がブラキサーかどうかを疑う一つの目安にしてください。
まとめ
ブラキシズムと治療法そして、ブラキシズムを疑う症状などを確認してきました。
ブラキシズムは非常に強い力を生じます。
それは歯だけでなく歯を支える組織や顎にまで影響します。
顎の筋肉の緊張も一つの要因となるため、日中には歯と歯が接触していないか日頃から気をつけてください。
ブラキシズムを疑う症状が出ている場合には一度歯科医院で相談し、治療を受けるべきか確認してもらう様にしましょう。