インプラント治療とは
インプラント治療は非常に普及してきました。
様々な外科的な方法や材料自体の進歩発展によって、患者さんに恩恵をもたらしてきています。
インプラント治療はその治療成績から補綴治療(歯を失った時に行う治療)の一つとして十分検討しても良いものと思われてきています。
しかし、インプラントは外科的な治療を伴うため、全身的な問題がないとしても局所的な問題から簡単な治療とならない場合があります。
特に粘膜の厚みや骨の厚みの問題などがその代表例です。
インプラント治療に必要な骨
インプラントには様々なメーカーのシステムが存在しています。
海外製のものや国内製のものも存在します。
インプラントはネジのようなスクリューを顎の骨の中に入れて人工の歯根の役割をさせるものです。
このスクリューをインプラント体と呼びます。
このインプラント体のサイズはメーカーによって多少ばらつきがあります。
一般的に細いとされているタイプのものでも直径3mmはあります。
インプラント体を入れる時にこの幅以上に骨がないと追加の外科処置が必要になります。
インプラント治療に必要な骨の厚みや幅
インプラント治療においては、行う部位や場所によって様々な制約が存在します。
一本だけ歯を抜くことになった場合には、両隣には歯があるはずです。
インプラント体と自分の歯の間には最低2mmの距離が必要と言われています。
それがインプラント同士の場合は3mmの距離が必要になります。
またインプラントを入れる場所の頬側や舌側と呼ばれる外側や内側の骨は最低1mmミリ程度保存することが必要になります。
これらを守らないと後で骨が吸収したり、歯ぐきが痩せて歯ぐきからインプラント体が露出してきたりとトラブルを招きやすくなります。
補綴治療予定部位の隙間があまりに少ない場合には矯正治療を合わせて行ったり、無理にインプラントをせずに他の補綴治療を行うことも検討することもあります。
インプラント治療に必要な骨の高さ
インプラントは骨の厚みや幅だけでなく高さも必要になります。
上下の奥歯に相当する部位にインプラント治療を希望する場合には、解剖学的に避けなくてはいけない部位が存在します。
下顎であれば下歯槽管、上顎であれば上顎洞と呼ばれる部位が非常に重要です。
それらにインプラント体の先端が入り込まないようにしなくてはいけません。
下歯槽管の損傷は知覚麻痺などを引き起こします。
上顎洞に近くなるとそのままインプラント体が上顎洞に迷入してしまうこともあります。
このため下顎の場合は垂直的な骨造成や、上顎洞との距離がない場合には上顎洞挙上術(サイナスリフト)を行うことも珍しくありません。
インプラント治療で必要な骨が無い場合
インプラント治療には骨の厚みや幅が必要なことは前述の通りです。
しかし、見た目に非常に関わる上顎の前歯の外側の骨の厚みは1mmもないことが殆どです。
そのような場合にはインプラント治療を諦めるべきかというとそうではなく、追加の外科処置によって可能となる場合があります。
骨の必要量が少ない場合には、人工の骨などと自分の骨を混ぜて必要部分に補填することがあります。
自分の骨と聞くと驚くかもしれませんが、インプラントを入れる際のネジ穴を掘る時に採取された骨を使用することもあります。
骨が大きく無い場合にはブロック骨を採取することもあります。
この場合には、主に顎の骨の一部を削ることもあります。
しかし余程大きく骨がない場合でなければ、前者に準じて行うことが多いです。
インプラント治療で必要な骨が無い場合に骨を補う時
骨補填はインプラント埋入時やインプラント治療前に行うことが多いです。
ただし、基本的には歯ぐきを切る外科処置を行うと歯ぐきの位置が変わったり、骨が下がることが考えられます。
したがって、可能であれば外科的なアプローチの回数を減らす傾向があります。
リッジプリザベーション(抜歯の時に抜歯した部位の骨が痩せないように工夫する技法)や抜歯即時埋入法(抜歯を行うと同時にインプラント体を埋入する方法)などが挙げられます。
これらは抜歯後に骨が大きく失われることを防ぎ、骨の温存を図るときに用いられる技法です。
インプラント治療における治療方針
インプラント治療は外科治療の方法や選択するインプラントメーカー、患者さん自身のお口の状態、粘膜・骨の厚みなどによって大きく治療方法が異なることがあります。
外科治療が必ず必要で自由診療で行うのがインプラント治療です。
どのような治療方法でもそうですが、事前にどのような治療方針となるかをよく相談してから始めるようにしましょう。
まとめ
インプラント治療に必要な骨の厚みなどについて確認してきました。
日本人の骨の厚みや粘膜の厚みは薄い場合が多いことが知られています。
したがって、前歯のような審美的な領域では簡単な外科処置だけではなく、追加の外科処置が余儀なくされる場合があります。
追加の外科処置をしないと後からトラブルになるケースもあります。
当たり前ですが、人によってお口の状態などは異なります。
したがって事前の検査や診断が治療方針に大きく関わります。
もしも、インプラント治療について検討したいのであれば、一度かかりつけ医に相談してみましょう。